シリア危機から13年 長期にわたり母国を離れている若者に日本で未来への道を拓く

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2011年3月の東日本大震災から13年を迎え、東北地方の復興に関するニュースを目にする機会も増えてきたのではないでしょうか。シリア危機は、同じ2011年3月に始まり、13年経っても解決が見えず、多くの方がいまだに母国を離れた生活を余儀なくされています。2023年6月に難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した「グローバル・トレンズ・レポート 2022」において、難民の出身国の第1位はシリアとなり、その数は650万人にのぼっています。今回は、パスウェイズ・ジャパンの受け入れたシリア学生のインタビューをご紹介します。

日本で学ぶシリアの学生たちのストーリーと共に、学生たちの思いの背景も知っていただきたく、ご紹介します。13年目を迎えるシリア危機は、特に若者たちに深刻な影響を与えています。多くの若者が、人生の重要な時期に故郷を離れざるを得なくなりました。これらの若者は、かつては自国の大学で高等教育やキャリアアップを目指していましたが、突然、その基盤を失いました。紛争は彼らを故郷から引き裂き、教育を続ける機会を奪いました。かつて学びと希望の中心であった大学や学校は、遠い記憶となり、これらの学生は安全を求めて国境を越えました。また、シリア危機が10年以上続く中で、幼少期に母国を離れ、大事な青年期を、法的な地位も教育機会も不安定な状況で過ごさざるをえなくなった若者も多くいます。教育へのアクセスを喪失したことは、紛争がもたらす深刻な結果であり、夢を追うことを先延ばしにし、希望を抱くことを保留にした若いシリア人の世代を生み出しました。パスウェイズ・ジャパンのシリアから学生を日本に受け入れる取り組みにより、シリアの学生は、避難する場所だけでなく、失われた機会を取り戻すチャンスを見出しています。日本で暮らすシリアの学生たちは、教育を継続するだけでなく、失われた夢の回復と、かつては手の届かないと思われた未来への追求についても語っています。

学生のインタビュー

パスウェイズ・ジャパンのシリア出身の学生への取り組み

パスウェイズ・ジャパンの事業は、2017年にシリア出身の学生を受け入れるところから始まりました。ヨーロッパに逃れるため地中海を渡るシリア難民の姿をニュースで見た日本語学校の方が「自分たちが受け入れることで難民を救うことができないか」と問い合わせをしてくださったことがきっかけでした。7年が経過し、2校の日本語学校から始まった受け入れは、宮城・千葉・東京・京都・沖縄の日本語学校6校と2つの大学に広がり、これまで受け入れたシリアの若者の人数は37名にのぼります。そして、すでに日本語学校や大学を卒業した29名の内、10名が日本での就職、15名が大学院・大学・専門学校への進学を果たし、日本で自立した生活を実現しています。

今年度の応募にも、シリアから266名の応募が集まり、その中から選考を通過した6名の若者がこの3月に来日します。今年度からは日本語学校に加え、大学での受け入れも始まり、シリアの学生の日本への受け入れと進学の選択肢が広がることとなりました。

また、受け入れ開始から7年を経て、シリア出身学生のコミュニティもできつつあります。新しい学生には先輩学生が日本での生活の工夫や進路に向けたオリエンテーションを実施し、その後もアドバイスするなど、共助が生まれています。このような社会的なネットワークも活かしながら、今後も、パスウェイズ・ジャパンでは、日本に受け入れる学生が安定した生活を立ち上げ、日本語学習や専門分野の学びを深め、各自が目指すキャリアを実現できるよう取り組んでいきます。

シリアの学生たちの中には、母国の危機と同じ月に発生した東日本大震災の大きな被害とその後の復興に、自分たちの母国の状況を重ねる者もいます。災害により多くのものを失った人々の悲しみに心を寄せながら、母国の復興にいつか貢献できるようになることを願い、日本での生活に励んでいます。

私たちパスウェイズ・ジャパンでも、13年という長い間、母国を離れざるをえなくなった人々に思いを馳せながら、シリアの若者たちが、一度失った夢や希望を日本で取り戻し、未来を切り拓くことができるよう支援していきます。