パスウェイズ・ジャパンでは、今年度、シリア・アフガニスタン・ウクライナから合計22名の学生を新たに日本で受け入れました。
(今年度の受け入れ自立支援事業についてはこちらをご覧ください)
いずれの学生も、母国で内戦や紛争、抑圧により、母国や難民として逃れた国で希望が描けない中、教育を通じて自らの力を伸ばし、日本社会そして母国へ貢献することを目指す高い意欲を持って、日本にきました。ぜひ学生たちの思いを知っていただきたく、歓迎会で行った代表者6名のスピーチをご紹介します。
シリア出身・マルワさん
私は皆さんの前で、トルコに住むシリア人としての私のこれまでの歩みと、日本での勉強を続けるという私の決意を共有します。
シリアでは、豊かな文化と密接な絆で結ばれた家族との生活を楽しんでいました。紛争により、私たちは安全を求めてトルコへ逃れることを余儀なくされました。適応は困難でしたが、不確実性の中にも希望を見出しました。トルコでは、知識への渇望に促されて、私は成長と適応を遂げました。その時、革新と伝統で有名な日本のことを知りました。日本を選んだのは学問的な理由だけではなく、個人的な成長を象徴するものでした。日本の卓越性と活気ある文化に魅了され、その言語と伝統を習得することへの強い願望が湧きました。
日本では、単に高等教育を修了するだけでなく、多様性と理解を促進することを目指しています。教育と言語スキルを通じて、前向きな変化を推進したいと考えています。これから、明るい未来に向かって粘り強く、決意をもって進み、目標にむかって自分の運命をきりひらくための旅を続けたいと思います。
※最初と最後の段落は日本語でスピーチし、途中は英語でスピーチしたものを日本語に翻訳しました
シリア出身・ヒシャムさん
私はシリア出身の19歳で、物理学者を目指しています。私から見ると日本は美しくて安全な国です。日本の技術的進歩といい、 日本人がとても丁寧で親切であることといい、日本を選ぶ理由には困りませんでした。ですがもっとも重要な理由と言えばやはり、努力と知識を重視する国だからです。シリアの戦争のため、多くを失った私たちはトルコに移りました。そこで、安全と安定を追求しました。まともな教育をうけることは困難でした。機会の不足、不安感、歓迎されない感覚がありました。様々な理由により、自分自身の可能性を追求できませんでした。今、私は日本にいます。私を制限するのは自分自身だけです。パスウェイズ・ジャパンの方々に心の底から感謝しています。だからこそ、この機会の重要性を私の仲間たちに強調したいと思います。私たちがいるこの恵まれた状況を認識し、それに感謝しましょう。その感謝の力を使って障害を乗り越え、意義あるつながりを築き、永遠の思い出を作りましょう。希望をモチベーションにし、自分自身を誇れるような自分になるために努力しましょう。さあ、本当の冒険はこれからです。
※日本語でスピーチしました
アフガニスタン出身・ライーサさん
私たちは日本語でスピーチを行うことができればと考えていましたが、残念ながらまだそのレベルまで日本語が上達していません。でも、これから日本語をマスターして話せるように最善を尽くします。今回は、私たちがここにいる理由とその方法について話します。
アフガニスタンの状況が、約2年前にタリバンがカブールを制圧してから本当に悪化したことを、皆さんはご存知かもしれません。特に女性にとって、毎日がより厳しくなっています。タリバンは人々、特に女性に多くの制限を課しました。教育を受けること、働くこと、さらには一人で外出することや旅行することまで禁止しました。なぜでしょうか?それは彼らが反女性でテロリストの集団だからです。
タリバンが来てから、私たちはタリバンが私たちに課した制限のために多くの問題に直面しました。これにより、私たちの日常の普通の生活は変わりました。アフガニスタンという国で、私たちは人権を失いました。言論の自由、宗教の自由、外出の自由を失い、挙げればきりがありません。民族的および宗教的差別は最高潮に達しました。(少数派である)ハザラの人々とは他の民族グループよりも大きな被害を受け、犠牲を払ってきました。ハザラの部族は、タリバンの自爆攻撃や爆破により、多くの若者や教育を受けた人々を失いました。
そのため、私たちはその状況から脱出し、アフガニスタンを離れる機会を求めていました。JALPプログラムは、アフガニスタンを離れ、新しい生活を始めるための素晴らしい機会でした。
日本は世界の先進社会の一つであり、よりよい人生を送るために必要な、多くの経済的、また教育的な機会を提供してくれます。日本は世界第三位の経済大国であり、さらに地球上で最も安全な国の一つであり、魅力的な生活様式を持つ国です。自然環境と調和した高い経済レベルの生活様式です。
これらの魅力と理由によって、私たちは日本を選び、ここにやって来ました。そして、学校や大学に進学して、さらにここで働いて十分な収入と貯蓄を得て、幸せな人生を送るために、私たちは新しいスタートを切ることを決めました。
※英語のスピーチを日本語に翻訳しました
アフガニスタン出身・ファイザさん
まず、私たちの人生を形作り、失意の時、成功の時を通じて支えてくれたパスウェイズ・ジャパンへの感謝から始めたいと思います。私はパスウェイズ・ジャパンが現在行っている活動と、全ての重要なことをきちんと確認しながら、疲れを知らずに働いてくれたスタッフの方々に心から感謝しています。
今日は、アジアの心臓部と呼ばれる場所、豊かな文化と親切な人々がいる場所、さまざまな国籍と伝統を持つ人々が集まる場所、闇と困難から希望が芽生える場所について話します。アフガ二スタンの人々は裕福ではありませんが、寛大で知的です。いつの日か、神の御心によって、平和が訪れることを願っています。
子どもの頃、過去のタリバンの人権侵害について聞いてはいましたが、実際にはそれを見たことはありませんでした。残念ながら2021年、タリバンがアフガニスタンで再び権力を握ることとなり、私は彼らがカブールに到着した日を覚えています。私を含めて、人々はとても怖がっていました。タリバンの実効支配の下での生活は日に日に厳しくなり、数多くの人権侵害が行われました。
貧困、暴力、殺人、誘拐……が増加しました。タリバンが通りで女の子を誘拐した日を覚えていますし、その瞬間を決して忘れることはできません。私たちは一人で外出することが許されていませんでした。
人は「希望があるところに人生がある」と言います。私たちは失望から希望を見出し、失敗から成功する方法を学びます。
ただ何かが起こることを願うだけでは十分ではありません、希望を持つことで、人はさまざまな道を進み続け、人生においてどんなことでも達成することが可能となります。
パスウェイズ・ジャパンを選んだことは、私の人生で最高の出来事の一つであり、希望に形を与え、再び立ち上がることを促してくれました。そして、私がこの国を選んだのは、この国が発展していて素晴らしい教育制度を持っているからだけでなく、日本独特の文化と人々が保ってきた伝統が本当に好きで、それを深く知ることを望んでいるからです。
※英語のスピーチを日本語に翻訳しました
ウクライナ出身・ダリナさん
国で戦争が始まったときに、ショックを受けました。怖かったです。先ずは、朝起きて、両親が何かについて話すのを聞きました。それから母が部屋に入って、「戦争が始まった」と言いました。兄はロシアとの国境から50kmの町にある大学で勉強していました。兄は車ですぐそこから逃げました。爆発の煙も見ました。兄は次の日に私たち家族と合流し、一緒にロシアから離れた所へ行きました。その間に別の都市にも住んでみましたが、そこで爆発の音を聞いて、戻りました。私の大学の勉強は全部オンラインでした。また、去年の冬はロシアの攻撃があり、電気があまりありませんでした。寒かったです。
日本へ来たかった理由は子供のころから日本の文化が好きだからです。10歳ぐらいのときから日本のアニメや音楽が好きになって、日本に住んでいる人の日本の生活についてのビデオを見れば見るほど気に入りました。12歳から家庭教師と日本語を勉強し始めて、これから日本で勉強したいです。
日本語学校を卒業してから、日本で専門学校に入学したいと思います。それから仕事を見つけて、ここに住みたいです。それに日本の色々な所へ行きたいです。ほかの国にも旅行したいと思います。ここで素敵な友達を見つけられると期待しています。
※日本語でスピーチしました
ウクライナ出身・シュジさん
ロシアによる占領が始まって以来、ウクライナ人は皆、精神的、肉体的、経済的、あるいはそのすべてにおいて、それぞれが悲惨な苦しみを味わいました。
個人的には、突然の物音に怯え、警戒するようになり、不安はピークに達し、私は精神衛生的に以前よりも弱くなりました。しばらくの間、勉強する気力もなく、それが人間として最大かつ最悪の影響だったと思います。幸いなことに、私は戦争で引き裂かれた国の国民としての生活と、より大きな何かを成し遂げようとする学生としての生活とのバランスをなんとか取ることができるようになりました。楽になったわけではないですが、今は耐えられるようになりました。
私がこの素晴らしい機会を得られたのは、私がウクライナで学びを続けた結果だと考えています。私はさらに多くのことを学び、日本の文化、伝統、人々、言葉を知りたいと思っています。私は自分自身のためにより良い未来を望んでおり、そうすれば愛する人たちを助けることができます。そして、日本で学び、生活することで、私はその機会を得ることができると信じています。
日本での私の目標は、日本語のスキルを磨き、自分の世界観を拡げ、物事への理解を広げることです。毎日新しいことを学び、新たな高みを目指したいと思います。また、仕事をしながら、日本で他の分野の勉強を続けたいと思っています。
物心ついたときから、勉強して知識を蓄え、周りの人たちの役に立ちたいというのが私の人生の最大の目標でした。
※英語のスピーチを日本語に翻訳し、イベント当日は日本語でスピーチしました
学生たちは、今後2年間、宮城・千葉・東京・京都・岡山・沖縄と日本各地に広がる受け入れの大学・日本語学校で日本語を学ぶと共に、アルバイトなどを通じて、日本社会との接点を広げていきます。そして、日本語力を高め、様々な経験を積んで自身を伸長させ、高等教育への進学・就職を目指していきます。
パスウェイズ・ジャパンでは、学生が日本で様々な困難を乗り越えながら、日本で自分の目指すキャリアを見つけ実現できるよう、共に歩んでいきます。