難民の状況となった人々の高等教育への進学率は、全世界で6%と、一般の若者に比べて著しく低い状況です。難民の背景を持つ若者達が、高等教育を受ける機会を得ることで日本社会で活躍し、引いては 日本社会を多様な人財が活躍できる国に変える原動力となることを願う、寄付者の渡邉利三氏の強い意志に基づいて、「渡邉利三国際奨学金」は設立されました。この度、2023年度の奨学金の授賞式を4月29日に都内で開催し、奨学金を受領する奨学生に加え、ご家族、支援団体や支援者の方々、合わせて約30名が集い、奨学生達の新しい門出を祝しました。
本奨学金は、難民の状況となった人々の大学への進学を支援し、高等教育を受ける権利と機会が制限されている状況の改善と卒業後の就職、そして若者達の夢の実現に寄与することを目的としています。未だ安定した在留資格を得ていない難民の方を対象とする日本では数少ないプログラムの一つとなっています。昨年度は、公益財団法人パブリックリソース財団が奨学金事業を実施しパスウェイズ・ジャパンは一部業務を受託する形で運営に携わりましたが、今年度よりパスウェイズ・ジャパンがプログラムを運営する形となりました。本年度は37名の応募者があり、学識経験者等で構成された選考委員会による審査を経て、シリア、アフガニスタン、ミャンマー出身の合計9名が奨学生に選ばれました。
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当日は、奨学生ひとりひとりが証書を授与された後、奨学金授与にあたってのスピーチを行いました。それぞれ紛争や迫害によって教育を中断せざるをえず、逃れた先で新しい生活を始め苦労した経験を話しながら、「日本で建築を学び母国の復興に貢献したい」「経済について学び、将来は日本と母国のかけ橋となりたい」「義足や義手に関するテクノロジーを学んで内戦で手足を失った人を助けたい」と将来の抱負を語りました。多くの奨学生が、学習してきた日本語で、学びへの希望を失わず今回の機会を得て活かそうとする意志を力強く話し、参加した方からも感銘の声が多く聞かれました。
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このプログラムの支援者の方々からは「自分の心を信じて、夢に向かって一歩一歩進んでください」「他の難民の方の希望の光・ロールモデルになるので、将来の夢に向かって頑張って欲しい」などお祝いのメッセージが寄せられました。
そして奨学金基金寄付者の渡邉利三氏からは、5月5日の節句に掲げられる「鯉のぼり」が、向かい風で一番美しい姿を見せることに擬えながら「皆さんはこれまで多くの苦難や逆境を乗り越え日本で生活していると推察しますが、これからもさらに強い『向かい風』に直面することがあると思います。 その時こそ『向かい風』の中、空中で美しく舞う鯉のぼりのように皆さんの力強さを発揮してください。」とのメッセージが贈られました。
パスウェイズ・ジャパンでは、今後、奨学生がそれぞれの進路で自分の目標に向かって進み、将来安心して日本社会で暮らし、活躍できるよう支援していきます。