2022年2月のロシアのウクライナへの侵攻から、パスウェイズ・ジャパンでは、政府、教育機関、企業など、多くの方々のご協力をいただきながら、108名のウクライナ避難民を日本語学校・大学で受け入れる取り組みを進めてきました。年度末を迎える2023年3月18日に、各自の日本での経験を振り返るとともに将来を考える機会を作ることを目的に、テンプル大学ジャパンキャンパスでリユニオンを開催し、日本各地の日本語学校・大学で学ぶ合計92名が集いました。参加した学生の中には、ウクライナで分かれて以来久しぶりに仲間と再開を果たし、笑顔で抱き合う姿も多くみられ、学生同士のつながりを深める機会となりました。
午前中は、ワールドカフェ形式のワークショップで各自の経験を共有すると共に、互いの経験を聞いた上で、今後のキャリアやそれに向けて何をしていくかを考えました。日本に来てからの苦労や戦争が続く母国への不安なども共有しながら、最後の方には共に困難を乗り越え日本で未来を切り拓いていこう、と互いを励ましあう言葉も多く聞かれました。
(ワークショップの様子 撮影:村越大輝(ICU学生))
午後は、日本企業からのプレゼンテーションとメンタルヘルスに関するセッションを日本語学校パスウェイズと大学パスウェイズのプログラム毎に2チームに別れて実施しました。企業のプレゼンテーションでは、ウクライナの学生受け入れに支援をいただいている株式会社資生堂とAirbnb Japan株式会社が、企業の人材採用や働き方、キャリアの積み方について紹介しました。また、モノグサ株式会社で働くウクライナの学生が自ら開発に携わった日本語の学習アプリについて説明しました。セッション後も、日本の企業への応募やインターンシップへの参加など、登壇者に多くの質問が寄せられました。
(プレゼンテーションの様子 撮影:村越大輝(ICU学生))
メンタルヘルスに関するセッションでは、NPO法人TELLのウクライナ人を含む3名のスタッフが、来日直後に行ったストレス・マネジメントに関するオリエンテーションのフォローアップとして、アクティビティを伴うワークショップを行いました。日本の生活でどのようにストレスに対処できたかを振り返ると共に、今後どのようにメンタルヘルスの課題に対応すべきか、体験を通して学ぶ機会を提供しました。
(ワークショップの様子 撮影:村越大輝(ICU学生))
夜には、受け入れ先の大学・日本語学校、支援団体の方約30名にもご参加いただき、懇親会を行いました。参加いただいたゲストの方からも、「学生の活き活きとした表情を見ることができた」「他の学校の方との情報交換の場にもなった」といった感想をいただきました。会の終わりには、ウクライナの音楽に合わせて学生たちが楽しく踊る一幕もあり、様々な困難を抱える中で仲間と共に楽しむ時間にもなりました。
(懇親会の様子)
なお、リユニオンの前日には、秋の追加募集で採用され4月から新たに大学パスウェイズに在籍する学生等15名へのオリエンテーションも開催しました。これらの学生を加え、パスウェイズ・ジャパンのプログラムで学ぶウクライナの学生及びその家族は合計108名(内2名は帯同家族)となりました。本イベントでも、有志の学生がサポートスタッフとして運営に携わり、ワークショップのファシリテーションを行ったり、イベント中に参加者に悩みを書いてもらい答える「ヘルプコーナー」を設けるなど、学生間で支え合う動きも生まれています。
ウクライナに平和が達成され、避難民が安心して祖国に戻れるようになるまでには、残念ながらまだ多くの時間が必要と考えられますが、日本で学ぶ学生たちは、今後、日本の社会にも多くのものをもたらすと共に、ウクライナと日本社会とをつなぐ存在になってくれるはずです。今後も、学生たちが日本での生活を通して未来への道筋を切り拓いていけるよう、受け入れ教育機関や協力企業、支援者の皆様と連携しながら、活動していきます。
*当日の模様はメディアにも掲載されました。下記をご覧ください。
2023-03-19 朝日新聞
ウクライナから避難の学生100人が交流 就職・進学を前に課題共有
2023-03-23 読売新聞
ウクライナから避難 学生たちが交流集会
2023-03-25 毎日新聞
仕事や勉強、励むウクライナの若者 戦地を胸に、日本で生きる
2023-05-09 朝日新聞
大学、ウクライナ支援工夫 学生受け入れ長期化、寄付やCF