グローバル難民フォーラム2023参加報告①GRF エデュケーション・キャンパス

4年に1度の難民に関する国際会議「グローバル難民フォーラム 」が、12月13ー15日までスイス・ジュネーブで開催され、代表理事の折居が参加してきました。4回に分けてフォーラムの参加報告をお届けします。

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2023年12月13日―15日にスイスのジュネーブで開催された、第2回グローバル難民フォーラム(GRF)に参加しましたので、以下会議の模様とパスウェイズ・ジャパン、そして日本の政府・市民社会の貢献についてご報告します。

グローバル難民フォーラムは、増え続ける難民という課題の解決のため、4年に一度開催される国際会議です。2015年の「欧州難民危機」を契機に、新しい枠組みとして2018年に「難民のためのグローバル・コンパクト」が国連総会で採択され、以後「受け入れ国の負担軽減」「難民の自立支援」「第三国へのアクセス拡大」「安全で尊厳ある帰還に向けた環境整備」の4つの分野で、取り組みの進捗を4年毎に確認することを目的にしています。

またこの会議では、難民の課題解決のため旧来の国連と各国政府、難民支援NGOに捕らわれない「社会全体による取り組み」が強く推奨されており、今回の会合にも企業、財団、宗教系組織、教育機関、市民社会組織、学生グループ、当事者である難民主体の団体等、様々な関係者が集まりました。日本からも、企業、宗教系組織、NGO、難民のユース団体等、約30人が出席しています。

会議の仕組みは、以上の4つの重点分野で、以後4年間の取り組みについて各組織が「宣言(プレッジ)」を行い、4年後にその進捗を確認するという形で進められます。そして今回の第2回から、特に重要な分野のプレッジを「マルチステークホルダー・プレッジ(MSP)」としてまとめて扱い、グローバルにどれだけの成果が上がったのか、分野毎に測れるようにする仕組みが取り入れられました。

会議が開催される町ジュネーブは、国際連合(国連)の前身組織である国際連盟の本部が置かれた場所で、現在も今回の会議を主催した難民高等弁務官事務所(UNHCR)を始め、国連の専門機関の多くが本部を置いています。会議はスイス政府とUNHCRが共催し、共同開催国として各大陸から6か国が選ばれており、今回の会合ではアジア太平洋地域から日本が共同開催国となり、上川洋子外務大臣が出席しました。

今回パスウェイズ・ジャパンからは、「第三国への教育パスウェイズ・グローバルタスクフォース(注)」の運営メンバーとして、代表理事の折居が12月12日の難民の教育に関する関連会合と、13日、14日の本会合に参加させて頂きました。以下それぞれの会合に関して報告します。

(注)「パスウェイズ」とは、難民の第三国への受け入れの「道筋」を意味しており、「難民のためのグローバル・コンパクト」によって、グローバルな拡大が推奨されている取り組みの一つです。

12月12日(火)GRF エデュケーション・キャンパス

まず、12日(火)には、GRFの関連イベントとして、難民の教育に関する「GRFエデュケーション・キャンパス」に参加しました。GRFでは、高等教育に関連して「2030年までに15%:難民の高等教育と自立へのアクセス拡大」、「技能(就労・教育)を通じた補完的パスウェイズ」の2つのマルチステークホルダー・プレッジへの参加が呼びかけられており、各セッションではプレッジを行った団体から、活発な発表がなされ、質疑が行われていました(日程の詳細はこちらを参照)。

「高等教育を通じた第三国へのパスウェイズ拡大」に関する分科会では、オーストラリア、フィリピン、カナダ、イタリアでの取り組みが紹介された他、IOC/オリンピック難民財団からはスポーツを通じた難民の受け入れや社会統合の取り組み、またDuolingoからは、安価な語学教育と語学試験の提供の取り組みが紹介されました。オーストラリアでは、カナダや米国での大学ネットワークと政府が協力した受け入れモデルに倣って、2024年から大学ネットワークによる受け入れを開始する予定で準備が進んでいます。またフィリピンでは、すでに2022年からロヒンギャ難民の受け入れが始まり、2023年に第2陣の学生が到着、新たな大学が参加する等、着実に取り組みが進められています。その他、にフランス、メキシコ等各地域からプレッジを行った団体の発表の機会があり、パスウェイズ・ジャパンからもプレッジについても紹介しました。(パスウェイズ・ジャパンが行った2つのプレッジに関する詳細はこちらを参照。)

その他エデュケーション・キャンパスでは、幼児期教育、中等教育、教師の役割、デジタル・ディバイド、ジェンダー平等におけるスポーツの役割、緊急期の教育支援開始、大学の役割、メンタルヘルス、専門学校教育等、様々な分科会が開催され、熱気のある議論が交わされました。共通の課題について、教訓や経験を共有し、よい取り組みを取り入れていくことは、支援の拡大のための大きな機会となります。そして各会合で、ユースグループや難民当事者から、活発な発表が行われていたことが印象的でした。