代表理事折居の欧州出張報告ーAnnual Tripartite Consultations on Resettlement and Complementary Pathways 参加

会合ではオーストラリアがアフガニスタン難民緊急受け入れ枠に関して発表

(出張報告前編はこちら)週末にパリからジュネーブに移動して、世界難民の日である6月20日(月)から毎年3日間開催されている、Annual Tripartite Consultations on Resettlement and Complementary Pathways (第三国への定住と補完的道筋に関する国際機関・政府・NGOによる3者会合: ATCR)に、日本のNGOを代表して参加しました。日本からは、政府より2名、NGOより1名が参加。過去2年間オンラインで行われていたこの会合も、2019年以来3年ぶりに対面での開催となりました。

各国の第三国定住プログラムと、市民社会による補完的な道筋(パスウェイズ)のプログラムに関わる、UNHCR、政府、NGO・市民社会の代表者が、公式の会議で、また会議の合間にインフォーマルな形で、活発に意見交換を行いました。

第三国への定住と補完的道筋に関する3者会合:ATCR-1日目(6/20)

初日の各セッションで多く挙げられていたのは、アフガニスタン、ウクライナの2つの人道危機に対する緊急対応です。元々第三国への定住とパスウェイズは、まず隣国などに逃れた難民を第三国で受け入れられるようにする取り組みですが、アフガニスタンとウクライナそれぞれの切羽した状況から、各国ではアフガニスタン国内、ウクライナ国内からも緊急の定住プログラムが進められていました。PJも、教育パスウェイズとして留学の在留資格で、アフガニスタン国内にいた女性の受け入れを行い、現在ウクライナの学生達の受け入れも進めていますが、他国の政府、NGOも、従来の枠組みに囚われず、同様の取り組みを進めていることを改めて確認することができました。

もう一点強く感じられたのは、各国では「アフガニスタン」と「ウクライナ」は、同等に人道的に対応すべき事象として取り組みが進んでいるという点です。日本ではウクライナ難民・避難民については前例に囚われない非常に人道的な対応が政府や社会全体で行われていますが、アフガニスタンについては当初政府救援機が出された以外、ビザ発給や来日後の支援については、特別に人道的な対応はほとんど行われていません。2つの事象は人道危機の規模と深刻さにおいては、同等に対応するのが国際的な潮流という点が、改めて確認できたように思います。

また、補完的パスウェイズの5つの分野(人道ビザ、家族統合、就業、留学、プライベートスポンサーシップ)に分かれてのセッションでは、アジアで取り組みを進めている団体として、教育パスウェイズのセッションでPJの取り組みを発表する機会がありました(ツイッターでも紹介されました)。日本でも、人道的な配慮による特定活動などの在留資格が保証されれば、市民社会主導で、難民・避難民の受け入れが可能であること、また受入れ後の日本社会での自立のためには日本語習得が鍵となり、教育機関と協力して習得の機会を必ずプログラムに組み込んでいることなどを説明しました。

第三国への定住と補完的道筋に関する3者会合:ATCR-2日目(6/21)

ATCR 2日目は、各地域の難民の状況、さらにATCRへの難民の参加などについて議論が交わされました。アフガニスタンやロヒンギャ難民を抱えるアジア、ベネズエラや中米の難民が課題である中南米、アフリカの角地域・西部・南部等各地域で難民を抱えるアフリカ、そしてシリア情勢が続く中東と、各地域の現場で活動するUNHCRやNGOスタッフから、課題と取り組みの紹介がありました。

その中でも、印象出来だったのは、補完的な道筋(Complementary Pathways)が、全ての地域で難民のための解決方法としてすでに理解、実践されており、今後さらに多くの取り組みが必要とされているということです。アジアでは、すでに5年目を迎えて、本国帰還も最初の受け入れ国への社会統合の可能性も見えない100万人のロヒンギャ難民について、第三国への定住、そして補完的道筋に大きな期待が寄せられています。アフリカでも、各国で数十年に及ぶ難民の滞在が続く中で、就業や進学、家族統合の形で、アフリカ域内で難民を受け入れる動きが広がっているとの報告がありました。例えば、イランと国交がない国がアフガン難民を受け入れる際には、政府間の定住プログラムは難しいため、補完的道筋を用いた取り組みが推奨されていました。

今後、いわゆる途上国からOECD諸国へという流れに加えて、地域内でも就労、学生、家族統合などの形で、難民が社会に受け入れられる動きが加速して行くことを強く感じました。そしてアジアで補完的道筋に取り組むPJに対する期待も、非常に高いものがあるのを感じました。

最後にもう一点重要な論点として、従来国際機関、政府、NGOの3者による難民受け入れに関する会合であったATCRは、3年前からそこに難民自身を加えて、実質4者会合となりつつあります。各国から、以前は政府、NGOの代表が参加していましたが、現在は難民コミュニティの代表も参加しており、今回初めてオンラインではなくジュネーブに、難民・元難民のNGOの代表が集まり、各会議で活発に発言していました。「 Meaningful Refugee Participation」(意味ある難民の参画)をテーマにしたセッションが今年も開かれ、今後どのように推し進めるか議論が深められています。

残念ながら日本の難民コミュニティから参加者が送られるには至りませんでした。日本国内では、ATCRについて、さらにそこに難民自身の参画が求められていること自体について、まだまだ知られていないのが現状です。まずは難民支援に関わるUNHCR、NGOなどで、どのように日本に住む難民自身の参画を進めることができるのか、今後議論を進めることができればと思います。

ATCRは最終日3日目に、2018年から始まった第三国への定住と補完的道筋10年間計画の見直しや、フィリッポ・グランディ難民高等弁務官を交えた質疑が行われました。折居は残念ながら日程の都合で、2日目までの参加となりましたが、今後、報告書などで得られた結果を、関係者にフィードバックできればと考えています。