代表理事折居の欧州出張報告ーGlobal Taskforce on Third Country Education Pathways参加

 

国立政治学院でのレセプション会場

6月15日より3日間、パスウェイズ・ジャパン(PJ)代表理事の折居が、PJもメンバーとなっているGlobal Taskforce on Third Country Education Pathways(第三国への教育パスウェイズに関するグローバル・タスクフォース: GTF)のパリでの会合に出席しました。

GTFは、2018年に国連総会で合意されたGlobal Compact on Refugees (難民に関するグローバル・コンパクト)で定められた、難民の「第三国への定住」と「パスウェイズ」のうち、「教育パスウェイズ」を計画、促進するために2020年に設立された組織です。各国政府、UNHCR、大学、NGOなどで構成され、PJも2021年9月に参加を認められました。グローバルレベルで、そして日本を含むアジアでの、今後の教育パスウェイズの計画と普及に貢献するべく、会合に参加しています。

設立以来、新型コロナウイルス感染拡大のためオンライン会合でしたが、今回初めて対面での会合がパリの国立政治学院で実現しました。

Global Community of Practices-1日目(6/15)

第1日はGlobal Community of Practices(グローバルなコミュニティでの実践)をテーマに、GTFメンバー以外にも、教育パスウェイズを実践する各国の政府機関、大学、NGO関係者が参加。公式な会合、会合の間の休憩時間やレセプションなどでの交流を通じて、さまざまな知見や経験の交換ができました。

1980年代からプライベートスポンサーシップで難民を受け入れているカナダを除き、各国で取り組みが本格化したのは2015年のヨーロッパ難民・移民危機以降です。紛争や迫害から逃れてきた難民を学生としてどのように受け入れていくのか、プログラム立案、募集・選考、受入れ時、在学中、卒業後のフォローなど、それぞれの段階ごとに事例が共有されました。

特にイタリアのNGO「Humanitarian Corridor(人道回廊)プロジェクト」、メキシコのNGO「Habeshaプロジェクト」などが事例として注目されました。各国の法制度、難民受け入れ、大学制度などに合わせて、様々な関係者の理解と協力が必要であることが紹介されました。

会議全体を通じて、世界のさまざまな取り組みから多くの学びを得ることができました。そして、実際に「教育パスウェイズ」を実践する人たちと出会い、彼・彼女らの熱意が、新たな制度を作り出していることを、強く感じました。

Global Community of Practices-2日目(6/16)

午前中は、「Times Higher Education」による大学ランキングで、今後、難民の受け入れや支援が指標の一つとなることが取り上げられ、その指標策定に、Global Community of Practicesがどのように貢献して行けるかが話題となりました。

午後には、フランスでの実践例を知るため、パリ第1大学パンテオン・ソルボンヌを訪問、フランスで教育パスウェイズを実践するNGO「MEnS」から詳しく聞きました。

フランスでは、自力で辿り着いた難民の受け入れが、すでに社会的な課題となっています。高等教育への受け入れについては、まずフランス国内にいる難民の背景を持つ若者を対象に進められ、現在1,200人が奨学金などを得ています。しかし、「難民」が大学に入る、高等教育を受けるという話自体、当初はフランス政府関係者に理解してもらうのが困難で、実際に制度が動き出すまでには数年がかかったとのこと。「難民」という言葉とイメージが、一人の人として若者を見ることを妨げていることは、どの国でも変わらない点を改めて感じました。

そして、すでに数万人の難民が国内にいる時に、なぜ教育を通じてさらに難民を受け入れるのかという点を理解してもらうためには、さらに多くの努力を重ねる必要があったとのことです。しかし、ついに今年度から20人の枠ができ、募集と選考を進めているとのことです。

今回はフランスの事例でしたが、欧州各国もそれぞれの社会的な背景から、様々なやりかたで教育パスウェイズに取り組んでいます。今後は、PJが手掛ける日本でのシリア、アフガニスタン、ウクライナの学生受け入れも、アジアにおける一つの事例として、多くの教訓を共有していきたいと思います。

Global Community of Practices-3日目(6/17)

GTF会合の3日目は、タスクフォースメンバーのみによる、今後半年から1年間の計画と目標に関する会議が開催されました。過去2年間、すべての会議をオンラインで行いながら議論をしてきましたが、初めて集まって対面で話すことで、深く幅広い対話を行うことができました。

欧州、北米、中南米、アジア・太平洋、アフリカと、各地域での取り組みの進捗や、各アクターの相互の連携の度合いは異なりますが、引き続き、それぞれの地域ごとの状況や進捗に配慮して、取り組みを促進していくことが確認されました。アジア・太平洋でも、ロヒンギャ難民を受け入れいれているバングラデシュや、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドなど、各国で取り組みが進んでいます。今後、経験と知見、課題を共有できる場が必要とされていることを強く感じました。

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