難民の背景をもつ方々の高等教育への進学率は7%と低く、UNHCRでも、2030年までに高等教育への進学率を15%に上げることを目標に掲げています。渡邉利三国際奨学金は、日本に住む難民の背景をもつ若者の高等教育進学を支援するために設立されました。これまで奨学金応募の機会が限られていた期間限定の在留資格の人々を対象にしており、学費と生活費を支援する返済不要のフルスカラーシップを提供することで、難民の背景を持つ若者自身が様々な専門分野を選択し、短大から大学学部、大学院まで多様な教育機関への進学が可能となっています。
今年は、留学生として来日した後に母国に戻ることが困難になった方、「補完的保護制度」の導入により定住者の資格を得た方など、難民の背景をもつ方々の状況が多様化する現状を踏まえて応募資格を変更し、2024年10月から2025年1月まで募集しました。
昨年度を上回る61名の応募があり、2025年1月から2月にかけて、書類審査と面接審査を行い、21名の奨学生が選ばれました。一部の学生は大学受験をしている最中となり、進学先の確定をもって、奨学生が最終確定します。
昨年度までは、シリア、アフガニスタン、ミャンマー、トルコ(クルド)の4カ国の学生でしたが、今年は新たにウクライナ、カメルーンの出身学生も選ばれました。背景も、幼少期に親と一緒に来日し難民申請中の不安定な状況の中で高校卒業まで辿り着いた方、母国で大学に進学しながら近年の政変により母国を離れざるを得なかった方など様々で、一口に「難民」と言っても個々人によって抱えている課題は多岐にわたります。
進学先は主に学部課程ですが、修士・博士課程の学生も在籍しており、専攻は文系から理系まで多岐にわたります。共通しているのは、日本で高等教育を受け、日本や母国に貢献したいという強い意欲と計画性です。私たちは、奨学金を通じて経済的な支援を行うだけでなく、学生同士の交流を促進し、当財団が連携しているさまざまな組織とも繋がる機会を提供していき、奨学生が自らの夢を実現し、社会に貢献できるよう支援していきます。
パスウェイズ・ジャパンで奨学金事業を行い4年が経過しますが、継続していく中で、奨学生も様々な成果を上げています。大学の学部課程で支援を受けていたアフガニスタンの学生は、この春日本の大手証券会社に就職することが決まりました。また、博士課程で環境工学を研究をしているミャンマーの学生は、母国の廃棄物処理に関する論文が学術誌に掲載され、パスウェイズ・ジャパンの名前も研究助成先として記載されています。
このような奨学生の活躍は、個人の夢が実現するという成果だけでなく、受け入れる日本社会にとっても活力となると考えています。
パスウェイズ・ジャパンでは、今後も、奨学金の事業を通じて、難民の背景をもつ若者が日本で自分の夢を実現できるよう支援していくとともに、難民となる困難な経験を経た若者が社会で貢献する存在となることを広く発信していきます。