難民・避難民の学生が活躍する裾野を広げる「企業交流会」開催

パスウェイズ・ジャパンでは、国外から受け入れられた難民の経験を持つ若者が、日本で望むキャリアを実現し、自立した生活を送れるよう、就職活動に向けたサポートを展開しています。並行して、難民の経験を持つ人々の雇用に関心を持つ企業等とのネットワークを広げ、スキルや経験など「人財」としてのポテンシャルを知ってもらうことで、企業での受け入れの土壌を醸成する活動も展開しています。

その一環として、難民・避難民の学生の採用に関心を持つ企業の方に、理解を深めていただくと共に企業間の繋がりを築くことを目的に、ブルームバーグとパスウェイズ・ジャパンとの共催にて「企業交流会」を開催し、企業・団体10社14名にご参加いただきました。シリア・ウクライナ出身の学生6名も参加し、自身の経験を企業の方と共有しました。

イベントでは、ブルームバーグよりパスウェイズ・ジャパンと協力した難民・避難民向けメンターシップや研修生制度等の紹介があった他、パーソルクロステクノロジー株式会社とモノグサ株式会社が自社で難民・避難民の採用に至った経緯とインターン生の活動の様子、社内でのサポート体制について発表しました。その後、シリアとウクライナ出身の学生が登壇し、自身の母国での経験、日本に来て学んだこと、今後の目標を話しました。会の最後には、参加した企業と難民・避難民の学生がグループに分かれ、少人数で交流を深めました。

企業のビジョンに沿って採用から定着まで支援:パーソルクロステクノロジー

パーソルクロステクノロジー株式会社は、昨年の企業交流会に参加後、難民・避難民の学生と直接面会する「就活フェア」への参加を経て、今年2月よりウクライナ出身の学生をインターンとして採用しました。
(採用開始時のプレスリリースはこちらをご覧ください)

パーソルグループではありたい姿として「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を掲げています。難民・避難民のインターン採用も、自社が特定した5つのマテリアリティの内、特に「はたらく機会の創出」「多様なはたらき方の提供」「学びの機会の提供」の解決に重ねあわせた位置付けで実施されています。もともと外国籍の社員も多く、外国籍社員のための独自ノウハウを資料化されていたほか、多様なエンジニアの成長に寄り添う体制を社内で構築しています。今回採用されたウクライナ学生は、日本在住歴が2年に満たないということもあり、入社後にメンターを配置するなどのサポート体制も整えてくださったことで、業務改善プロジェクトに参画し、RPAのシステムを学生が自力で構築し、チームに貢献できるようになりました。

インターン採用から生まれた事業の広がりと社内の変化:モノグサ

モノグサ株式会社では、ウクライナ危機勃発後、自社のミッション・バリューに照らし合わせて、ウクライナ避難民支援を検討し、その中で、ウクライナの学生をインターンとして採用することになりました。入社当初から、インターンの学生の特技を活かして社員との交流機会も積極的に作られていました。

業務では、学生の知識・スキルを活かし、日本語を学習するコンテンツを開発し、ウクライナ避難民への提供を実現するという成果も生まれています。一連の活動はメディアにも取り上げられ、利用者の幅や数も伸びており、ビジネスとして新たな広がりを見せています。インターン生の人柄も社風に合い、社員の中で自然な形で社会課題に対する対話が増えているそうです。共に働く社員も「支援」という枠ではなく多様性を活かした「雇用」として捉えられるようになっています。

就活を通してさらなる自己成長に:シリア出身 マダネさん

マダネさんは、シリア出身で、シリア内戦によりイエメンに逃れ、その後トルコへ行き、2019年に来日しました。千葉県の日本語学校での2年間の学びで理系の学部進学可能な日本語力を身に着け見事大学に合格、その後情報電子工学を学んでいます。
昨年大学3年生のときから就活に取り組み、希望していた業界で内定を得るに至った経験を、後輩へのメッセージとして熱く語ってくれました。自分の軸を見つけそれにそって情報収集をすること、仮に不採用となっても、それは自分の「能力がない」ということではなく、「合わない」ということで、自信を保ち続けることが重要だったと話してくれました。また、キャリアプランも深く考え、具体的にどういう人間になりたいのか、企業だけでなく社会にどう貢献していきたいのかを把握し、説明することを意識していたようです。シリア出身者への理解が日本社会で少なく、「難民であれば国籍に関わらず支援する意識がもっとあれば嬉しい」と締めくくってくれました。

日本で身につけた語学と知識を活かして就活へ:ウクライナ出身 ソフィアさん

続いて、現在、大学院で国際文化とコミュニケーションを学ぶソフィアさんが自身の経験を共有しました。ソフィアさんは、アジアや異文化理解に興味を持ち、ウクライナの国立大学で日本語を勉強していました。来日後、沖縄の日本語学校で2年間学び、アルバイトも並行して行う中で敬語など実践的な日本語力を向上させていきました。卒業後、もともと興味のあった国際文化とコミュニケーションの学びを深めるため、都内の大学院に進学、今秋から就活に臨みます。将来への不安もある中、「日本でスキルを身につけて働いていきたい」と語り、大学内で開催されている日本語会話練習のための「スピーキング・クラブ」などの機会にも積極的に参加し、自己成長を図っています。

難民・避難民の学生と企業のつながりが深まる

企業と学生の発表後は、少人数のグループに分かれて、企業と難民・避難民の学生と交流を深めました。企業からは、学生の方々に母国や日本での生活や今後の目標について質問があった他、各社から就活する学生への助言もありました。参加した企業の方の中からは、今後も積極的に採用を検討したい、個別に説明会など開催したいという前向きなお声もいただきました。

人材不足の中で、外国人の雇用に前向きな企業も増加しつつありますが、難民・避難民の雇用に関しては、企業の間で「在留資格等が難しい」等の誤解も少なくなく、まだまだ課題があるのが現状です。一方で、パスウェイズ・ジャパンのプログラムの卒業生のうち、進学者等を除く約3割がすでに就職をしており、2年間の日本語教育とその間にアルバイトや地域社会との繋がりを深める中で、日本語力や個々人のスキルを伸長し、日本社会で活躍できる「人財」として育っているといえます。

今後、パスウェイズ・ジャパンでは、11月に、就職活動を行なっている難民の背景を持つ学生達が企業各社と交流するイベント「就活セミナー」も開催を予定しています。企業と学生の繋がりをさらに広げ、難民・避難民の学生が「人財」として採用が進むよう取り組んでいきます。

(写真:ブルームバーグ)