パスウェイズ・ジャパン(PJ)では、日本に受け入れた学生たちを呼び集めて、自分を振り返り、他の学生や社会の様々な人々とのネットワーキングを行い、さらにキャリアについて考えるために、毎年3月に「リユニオン・デイ」を開催しています。今年は、「大学パスウェイズ・ネットワーク(JEPN)」としてウクライナ、シリアそして日本の学生が参加する「JEPN学生リユニオン・デイ」と、日本語学校に在籍・卒業するシリア・アフガニスタンの学生を対象とした「シリア・アフガニスタン学生リユニオン・デイ」の2回に分けて開催しました。本レポートでは、「JEPN学生リユニオン・デイ」について紹介します。
今回のリユニオン・デイは、23の大学・財団で構成する「教育パスウェイズ・ネットワーク(JEPN)」の主催により、上智大学を会場に行われました。ウクライナの学生61名、シリアの学生8名が集まったほか、これら学生の受け入れに関わる日本の学生8名も参加しました。前半は、企業関係者にスピーカーとして参加いただき、キャリアについて考える「キャリアトーク」、後半は、日本の学生生活で常に大きな課題として学生達からあげられる「日本での友達作り」についてワークショップを行いました。
前半の「キャリアトーク」では、8社14名の企業関係者及び上智大学のキャリアセンターの方に参加いただき、企業の採用活動や人材育成の取り組み、個々人のこれまでのキャリアの築き方について、グループワーク形式でお話しいただきました。また、上智大学キャリアセンターの担当者からは、まだ具体的にキャリアについて考えられていない学生を対象に、日本での就職活動の特徴等をお話しいただきました。
<参加企業・組織>Airbnb、SAPジャパン、サントリー、資生堂、上智大学、Bloomberg、他個人参加3名
これまでにPJが開催した「就活フェア」やBloombergと開催した就活メンターシップ、さらに個々の企業との交流会・説明会等を通じて、学生の日本の就活に対する理解はある程度深まっていましたが、今回のセッションでは、実際に現場で働く企業の方々と、1グループ5名程度で和やかな雰囲気の中、企業が採用で重視している点や求められる日本語力などのスキル・経験、入社後のキャリアパス等、より具体的な質問が多く上がりました。また、参加した企業関係者の中には、転職経験を持っていたり、外国人社員として日本企業で働いている方もおり、個人のキャリア形成や日本の企業での働き方・企業文化への適応など、就職後の長期的なキャリアを見据えた内容にも話が展開しました。参加した企業の方々からは「実際に関わり、非常に優秀な方が多いと驚きました」「積極的に質問してくれましたが、日本人の学生と共通する部分も多いと思いました」「学生が活躍できる場ができるよう、今後も何かしらの形でサポートしていきたいです」と、日本での就職を目指す学生の応援となるコメントをいただきました。
後半のワークショップでは、今回プロのコーチングスタッフの方にプロボノでご協力を頂き、多くの学生が日本での生活で課題としてあげる「日本での友達作り」を考えていきました。ウォームアップのゲームの後、参加者全員が車座になり、部屋の中心にテーマを書いた紙を置いた上で、「日本での友達作りに満足しているか」などの問いに対して、満足度に応じて立つ位置を変え、それぞれの立ち位置の学生が、自身の考えを共有する「コンステレーション」という形式のワークショップを行いました。
参加者からは、友達を必要と考える人、それほどではないと考える人、様々な立場から意見が出され、同国人や外国籍の友達作りは比較的しやすいのに対して、日本人の友達作りは、例え日本語が流暢になっても、考え方や習慣の違いで、自国の場合よりも長いプロセスが必要になるという点が、複数の学生から共有されました。また、同質性の高い日本社会で、外国出身者が本当に日本の学生と友達になれるのか、国際的な経験をした学生・個人でないと難しいのではないかなど、根本的な問いかけもなされました。また、比較的長いプロセスが必要な日本人の友達作りでは、まずサークルや「遊び」の機会、アルバイト等、継続して人々と接する場に身を置くことから始める必要があるとの意見も出されました。
ワークショップを担当したファシリテーターからは、友達を作ることの喜びとフラストレーションや痛みが共有されたことを指摘した上で、「この道のりを歩いているあなたは、決して一人ではない」とメッセージが送られました。
この日の最後には、パスウェイズ・プログラムに協力いただいている企業、行政、支援団体、大学・日本語学校関係者等を招待した交流会を開催しました。会場には学生達を合わせておよそ130名が集まり、ゲストや学生達がそれぞれネットワーキングを行う機会となりました。
会の後半には、この3月で日本語学校を卒業して専門学校進学が決まった学生と、大学で就活に取り組む学生からの近況報告があり、参加者全員でこの春卒業する学生達の門出を祝福しました。また、大学パスウェイズ・プログラムを通じて今年3月16日に来日したばかりのウクライナの学生4名・シリアの学生1名からも、今後の抱負について日本語でスピーチがありました。また最後にウクライナの学生2名によるアコースティックライブが行われ、ウクライナの曲2曲を会場の学生達と一緒に熱唱してくれました。
ウクライナの学生の多くは、今年で日本での生活が3年目となり、次の進路へと歩みを進める学生が増えてきています。多くの学生が日本での就職を目指しており、パスウェイズ・ジャパンでは、学生たちがこれまで培った日本語力やスキル・経験を活かし、それぞれの希望の進路を日本で実現できるよう、引き続き支援していきます。
ワークショップ写真 ©︎PJ/JICUF Koto Miura
レセプション写真©︎PJ/JICUF/Naoki Beppu