グローバル難民フォーラム進捗評価会合(GRF-PR)参加報告

2025年12月15-17日にジュネーブで開催された、グローバル難民フォーラム進捗評価会合(Global Refugee Forum Progress Review, GRF-PR-2025)に、代表理事の折居徳正が参加しましたので、以下皆様にその模様をお伝えします。

スイス・ジュネーブにおける会場の模様

国際会議でパスウェイズ・ジャパンの活動の進捗を報告

 2018年に国連総会で採択された「難民に関するグローバルコンパクト」に基づいて、難民の自立促進、各国への受け入れ拡大、紛争周辺国の負担軽減、そして自主的な帰還等について、4年ごとに目標を定めてその進捗を計る、グローバル難民フォーラムの進捗評価会合に、UNHCRより招待を受けて、参加することができました。

今回の会合の目的は、2023年の第2回フォーラムで各組織がプレッジ(宣言)した達成目標が、2年間でどこまで進んだかを確認することにあり、共同開催国の一つである日本政府も主導的役割を果たしていました。そして、難民の受け入れや支援に関わる政府関係者、国際機関、自治体、企業、宗教系組織、NGO、教育機関、スポーツ団体関係者、そして難民主導組織から約1,700名が参加して、各分科会や関連会合で、意見交換とネットワーキングが行われました。

さらに今回の会合は、2016年から2期10年に渡って難民高等弁務官を務め、このフォーラムの創設に尽力したフィリッポ・グランディ氏にとって、2025年末の退任を前に最後の国際会合であり、各会合で思いを込めた熱いメッセージを寄せてくれていました。

このフォーラムが最後の大きな任務となったグランディ高等弁務官による進行の様子

難民の再定住と受け入れ経路の拡大に取り組むパスウェイズ・ジャパンの代表として、今回は「安全な受け入れ経路拡大」、「難民の就労」等の各セッションに参加した他、教育を通じた受け入れに関する関連分科会「2030年までに難民の高等教育15%達成」の会合にて、2023年に日本国際基督教大学財団と行った共同プレッジに基づく、難民・避難民の学生の受け入れとキャリア支援等の進捗を報告しました。

報告を通じて、日本語学校への新たな難民学生の受け入れが、96名の目標に対してすでに65名を受け入れて67%達成、また20名の大学新規受け入れは28名を受け入れて140%達成している点は、参加者から評価を受けました。
※パスウェイズ・ジャパンのプレッジはこちらをご覧ください。

またアジア太平洋地域での教育を通じた受け入れに関する地域会合を、マニラ、東京、チェンマイと各地でカナダ大使館等と共催して、地域での普及に貢献している点も評価されました。人道・難民支援に関する公的資金が大きく削減される中、今後はグローバルな会合よりも、むしろ地域・国毎の会合が中心となるため、アジア太平洋での活動はそれを先取りしたものになっています。

本会議場での代表理事折居の様子

また、就労・教育を通じた各国への受け入れ経路拡大という大きな目標の達成状況でみると、各国政府による第三国定住プログラムは、2024年は18万8千人が再定住したものの、2025年は前半で2万8千と減少しており、2026年はさらに数が減ると予想されています。このような中、教育機関、企業、市民社会組織による難民の受け入れ経路の拡大が、今後さらに重要になっていくことが確認されています。

ロヒンギャ難民とスーダンに関する会合に参加

その他に参加した分科会の中で、特定の国・地域に焦点を当て特に印象深い会合が2つありました。一つ目はロヒンギャ難民に関する会合で、一次受け入れ国であるバングラデシュ政府から4名が参加して、現状の報告が行われました。2017年のミャンマーにおける大規模な虐殺等によって140万人に上る難民をすでに8年間支えている中で、2025年には各国からの支援が減額となり、厳しい状況にある同国の現状が強く浮き彫りとなる発表でした。その後、日本のJICAを含む各国政府や国際機関による協力の取り組み、ロヒンギャの当事者からの提案等が共有されましたが、現状での難民の生計向上や能力開発等の必要が提起される一方で、恒久解決としてミャンマーへの将来の帰還が実現するよう、ミャンマー政府に国際社会が圧力をかけ続ける必要生も再三言及されていました。

ロヒンギャ難民に関する分科会から。闊達な意見交換が交わされた。

 二つ目は内戦下のスーダンの開発促進に関する会合で、UNHCRでの最初の任地がスーダンで、任期最後の訪問地として1週間前にスーダンを訪れたグランティ高等弁務官よる基調講演が行われました。事実上の内戦は続いているものの、復興に向けた開発機関の取り組みが必要であること、そしてスーダン国民自身が持つ復興に向かおうとする力を、国際社会が支えるべきことについて強調されていました。現在スーダンは、バシール政権による独裁的な統治の終了後、2023年から国軍と国軍傘下にあった民兵組織の間で事実上の内戦となり、現在国土が両者の間で事実上二分されている状況にあります。移動を強いられた人々は約1200万人、国境を超え難民となった人々は約400万人に上り、現在世界で最も大きな人道危機となっています。会合では、一部で帰還を始めた難民・避難民もおり、復興支援が必要であること、さらに元々低開発国であるにも関わらず多くの難民を受け入れているチャド、南スーダン等周辺国への開発支援の必要性も強調されていました。

難民当事者の参加

また、3日間の会合を通じて、難民当事者の意義ある参加はこのフォーラムですっかり定着し、すべての会合、分科会でファシリテーターには難民主導組織の代表者が務め、スピーカーとしても各会合で当事者が発言した他、フォーラムの最後には難民代表と高等弁務官による対話が行われました。

ジュネーブ駅前の別会場で開催された難民学生組織による会合にも出席

そして、3日間の締めくくりとして、社会各層を代表から、フォーラムの振り返りとグランディ高等弁務官の実績への感謝が述べられ、特にトーマス・バッハIOC名誉会長兼オリンピック難民財団会長からは、2016年のリオ・オリンピックでの難民選手団の創設とその後の発展への協力に対して深い感謝が述べられました。そしてグランディ高等弁務官自身からも、キャリアの最後の締めくくる閉会のメッセージとして、人道支援の公的資金の大幅な減少という状況の中でも、開発支援組織、企業等多様なセクターとの連携が進み、GRFという場で一堂に会して取り組みを進めることができるようになったことの意義、そして難民条約が指し示す、難民として保護を受ける権利は、今後も国際的な協力の中で守られなければならないこと等が強調されました。2026年より難民高等弁務官の職責は、国連総会での承認手続きを経て、前イラク大統領で元難民のバルハム・サレハ氏に引き継がれます。

今後のパスウェイズ拡大に向けて

今回のフォーラムを通じて、シリアのように紛争が一先ず終結して、難民の帰還が始まり、今回初めて難民政策のプレッジをするに至った国もあった一方で、ミャンマー、ロヒンギャ、スーダン、ベネズエラ等、あまり報道されないものの深刻化する人道危機について多く語られ、人道支援機関の支援予算が減少する中、従来とは異なるアプローチが必要な、新しい世界となっていくことが改めて強く感じられました。そのような中、「社会全体でのアプローチ」を推進するグローバル難民フォーラムの取り組みは、予め進むべき道筋を指示してくれていたとも感じています。

パスウェイズ・ジャパンの取り組みも、市民社会が主導してウィンウィンな形で難民の若者を日本社会に受け入れていくモデルとして、引き続き大きな意義を持つと感じさせられました。現在シリアで起き始めているように、若者達の祖国で将来平和が達成され復興が進む際には、日本で教育とキャリア築いたこれらの若者たちは、日本と祖国を橋渡しして、祖国の再建に大きく貢献することになるものと信じています。