タイ出張報告①難民・避難民が多く住むタイのターク県でのニーズ調査

6月9日-12日に、ミャンマー(ビルマ)からの難民・避難民が多く住むタイのターク県を、高等教育と第三国へのパスウェイズに関するニーズ調査のために訪れました。タイとミャンマーの国境地域には、現在も9つの難民キャンプが設置され、約8万人の難民が暮らしているほか、キャンプ外にも多くの避難民が流入して暮らしています。

今回若者の高等教育とその後のキャリア形成に関して聞き取り調査を行いましたが、避難民のほとんどは「移民」と位置付けられて無登録で、子どもや若者は現在48ある非公認の「移民学習センター」で学んでいます。そして、ミャンマー国内での軍政に対する市民不服従運動と戦闘の激化、さらに徴兵の開始により、国境を逃れてくる人々の数は現在も増え続けているとのことでした。

移民学習センターで学ぶミャンマー出身の学生達

今回は5つの移民学習センターと2つの移民学習センター・ネットワーク、また奨学金提供や就活支援を行う地域の財団、さらにUNHCR現地事務所を訪問して、スタッフや学生から様々な話を聞くことができました。また、難民キャンプの一つも訪問して、キャンプ運営委員会や教育委員会、さらに大学進学を目指して実際に学びを進めて来た若者達とも、意見交換をすることができました。

キャンプ内の各種運営委員会や学校関係者そして学生達との会合の様子
キャンプの一つを訪問して調査の目的を説明

移民学習センターやキャンプ内の学校のカリキュラムは、ミャンマー語の独自の課程となっており、軍政下のミャンマー政府やタイ政府の認可を受けているわけではないため、正規の高卒資格として認定されない状況にあります。そのため、タイの大学で高卒資格と認められる、米国の大検に当たるGED(General Education Development)を受験して、タイの大学に進学しようと、多くの学生がこの資格試験を受けていました。また、GED受験のために米国の政治・歴史等を教える準備コースや予備校も作られています。しかしタイの大学への奨学金は限られており、高卒資格は取ったものの進学も正規の就労もできず、機会を探し続けている若者達が多くいるのが現状です。

また、ミャンマーの大学を中退したり、進学を断念して国境を越えてきて、タイで働きながら機会を探している若者も多くいるといわれており、その中にはミャンマーで日本語を学んでいたという学生も一定数いると思われます。

GEDの「予備校」で学んだ学生達との意見交換
移民学習センターの一つでの聞き取りの様子

現在ミャンマー国内からは、日本語を学んで留学生として、あるいは技能実習生や特定技能の働き手として、日本に渡航する手段がありますが、国境を越えて難民・避難民となった若者達には、高卒資格やタイでの在留資格等の問題から、タイで進学・就業する機会も、日本や他の国で進学・就職する機会も、ほとんどないのが実情です。

パスウェイズ・ジャパンとして、どのようにこれらの若者の社会に貢献したいという思いに応えることができるのか、今後検討を行って行く予定です。なお、今回の現地調査ではシャンティ国際ボランティア会から多大な協力を頂きました。また、教育パスウェイズに関するグローバルタスクフォースの活動の一環として、World University Service of Canada、Refugee Education Australia, Bard College, Institute of International Educationとの合同調査として実施したため、今後各団体が協力して、タイ国内に加えて、各国への進学や就労の道を拓いていくことができるか、それぞれ検討を行っていく予定です。