2021年8月15日のカブール陥落とタリバンによる実効支配の開始から3年が経過します。今年UNHCRが発表した「グローバルトレンズレポート 2023」では、アフガニスタンは難民出身国で1位となり、その数は640万人に上ります。加えて、現在アフガニスタンの国内に留まる人々も、タリバンの実効支配下で様々な権利を制限されており、特に女性は高等教育・就業の機会を奪われ、若者は将来の道を絶たれることとなり、人権侵害の状況は国際的に深く憂慮されています。日本ではアフガニスタンに関する報道は普段あまり行われませんが、政変から3周年で報道が増えるこの機会に、アフガニスタンの人々、特に女性や若者の状況について、改めて知っていただければ幸いです。
また2021年8月以降、日本大使館やJICAの職員、ODA関連企業社員、NGO職員、日本の留学経験者など、日本に繋がりがある850人以上の人々がアフガニスタンから日本に逃れてきました。2022-2023年には、計384人のアフガニスタン人が難民として認定を受け、さらに2023年12月現在312名が特定活動の在留資格で日本に滞在を認められています。しかし、アフガニスタンからの退避者であることでの公的支援はなく、さらに難民として認定を受けても、従来の半年間の日本語教育・自立支援プログラムでは経済的自立に至ることが困難な家族も多いのが現状です。パスウェイズ・ジャパンは、アフガニスタン退避者受け⼊れコンソーシアム(AFA)のメンバー団体として、難⺠・避難⺠に対する日本語教育など受け入れ体制の充実に向けた提言の策定にも取り組んできています。
・AFAの活動の詳細はこちら
以上を背景にパスウェイズジャパンでは、2022年から日本国外に住むアフガニスタンの若者の受け入れを開始し、これまでの3年間で受け入れた人数は14名に上ります。この3月から6月にかけて1期生3名が2年間の日本語学校のプログラムを修了して、全員が無事就職して、自立を果たすことができています。ビジネスレベルの日本語教育の機会を得ることで、日本で新たなキャリアを築いていくことができています。
退避を求める若者達は今も多くおり、2023年度の「日本語学校パスウェイズ」の募集には、6名の枠に対し、約700名の応募がありました。その内214人は母国で教育や就労ができない女性でした。2025年度に向けては、受け入れ人数を8名に拡大し、現在募集を進めています。
また、日本に住む難民の背景を持つ若者の高等教育を支援する「渡邉利三国際奨学金」でも、2024年度の奨学生12名のうち、4名がアフガニスタン出身の若者で、内1名は大学4年生の女性です。母国に戻ることが難しい中、将来母国の復興に貢献することを目指し、日本の大学・大学院で学びを深めています。
さらに、退避者や帰国困難となった留学生(英語で学位取得するため日本語は未修)やその家族に対しても、日本語を習得し、日本で自立した生活ができるよう、オンラインのアフガニスタン退避者等向け日本語講座受講者を提供し行っています。これまで20名が受講して、初級レベルの日本語を習得しました。修了者は、アルバイト採用が決まるなど、日本での自立に向けた一歩を踏み出しています。
下記にアフガニスタンの学生の声を紹介しています。ぜひご覧ください。
・2024年に卒業したハミードさんのメッセージ
・活動紹介動画より:アフガニスタン出身 サムさんのインタビュー
・2024年に新たに日本へ受け入れた3カ国の学生のスピーチのご紹介
ウクライナやガザでの戦闘や人道危機により、注億を向けられることがどうしても少なくなりがちなアフガニスタンですが、同国内での人権抑圧の状況、そして日本国内の退避者の現状から、パスウェイズ・ジャパンでは、今後もアフガニスタンの人々への支援に取り組み、紛争や政変から逃れた人々が、日本社会で自立に至る道筋づくりに貢献していきます。
*NHK「時事公論」で、8月22日(木)午後11:30〜午後11:40にタリバン支配から3年を迎えたアフガニスタンの現状に関するニュース解説が放映されます。https://www.nhk.jp/p/ts/4V23PRP3YR/episode/te/N7PQ26MQ2Q/