2024年11月20-21日に、在日カナダ大使館、日本国際基督教大学財団(JICUF)、パスウェイズ・ジャパンの共催により「難民のための技能に基づくパスウェイズ–長期的な社会統合に向けた課題と解決-」と題したシンポジウムが、在日カナダ大使館にて開催されました。この2日間の会議では大学進学や就労が可能な「技能」を持つ難民の受け入れの道筋(パスウェイズ)が、日本でどのように実践され、今後の拡大の可能性があるか、また長期的な社会統合のために何が必要とされるのかについて、政府、国際機関、企業、NGO、難民当事者等様々な関係者が相互の経験を共有し、今後の協力の可能性を話し合いました。2回にわたって会議の模様をお伝えします。
主催者の一つであるカナダは、長年にわたって政府と市民社会が協力した自国への難民受け入れによって国際社会に貢献しており、難民達が社会の一員となって働くことで、受け入れ社会にもポジティブな影響があることを示してきました。今回、在日カナダ大使館では、自国の経験を共有することで、日本を含む様々な国が教育や就労を通じた難民の受け入れの促進に貢献することを目的に本会議を共催しました。
会議は、カナダ大使館のデボラ・ポール副代表の挨拶から始まり、教育や就労を通じた難民のためのパスウェイズは、受け入れ国の抱える労働力不足や人口動態の課題に対応し、同時に難民となった人々にも生活再建の機会を提供する、革新的なアプローチとなることが強調されました。
メインセッションでは、教育と就労を通じたパスウェイズのグローバルな現状、また日本での現状展開が説明され、日本のような非英語圏への受け入れにおいては、語学学習を含んだ就職と自立のための支援と、永住や帰化等の安定した法的地位への道筋を用意することの重要性に焦点が当てられましたた。次に日本での実践例として、国際協力機構(JICA)、パスウェイズ・ジャパンとパートナー企業のパーソルクロステクノロジー株式会社、ウクライナ避難民の受け入れを行うヒューマニタリアン・イノベーション・グループ、グローバルに就労を通じた受け入れを進めるNGOタレント・ビヨンド・バウンダリーズとパートナーのトヨタ自動車から事例が発表されました。JICAやパスウェイズ・ジャパンのように教育を通じて受け入れてから就労支援を通じて就職と自立まで支援するモデルと、当初から就労を通じて受け入れるモデルがそれぞれ提示され、日本語習得、就活や企業とのマッチング、日本の職場文化への適応、企業側の採用・受け入れ態勢等の課題にどのように取り組んできているかが共有されました。例えばパーソルクロステクノロジー株式会社からは、難民を含む外国人社員が、職場や社会に戸惑うことなく適応できるよう、職場でのフォローアップ制度やガイダンス作成等の取り組みが紹介されました。非英語圏の国での就労という課題の大きさが認識される一方で、今後さらに働き手が不足する社会において、難民となった人々のための機会を拡大する可能性も提示され、発表後も活発に質疑が行われていました。
「難民となる経験」のセッションでは、ミャンマー、ウクライナ、シリア、アフガニスタン出身で、それぞれ別のプログラムで受け入れられた4人の発表者が、それぞれの経験と視点に基づいて、日本での社会統合に関して当事者の視点から、大変示唆に富んだ提言が行われました。各発表者は、それぞれの出身国のコミュニティを代表して、新たな土地で生活を築くために、言葉、文化、社会制度、教育、仕事等、様々な面で困難に直面しつつ、日本社会で頼れる人や組織を見つけてそれらを乗り越え、社会の一員となってきたことが共有されました。そして、今後日本で教育や就労を通じたパスウェイズのプログラムを拡大するためには、語学教育の充実、メンタルヘルスのサポート、ニーズに合わせた雇用プログラム等の必要性が強調されました。発表後は、参加者達から活発に質問や提案がなされ、セッションの終了後も続きました。また発表者自身もこの会議に参加したことで、難民に関わる幅広いステークホルダーについて理解を深めるとともに、様々な立場の人々が難民のためのパスウェイズの拡大に関心を寄せていることを知ることができたというコメントが寄せられました。
第1日目は、関係者間の協力関係を強化し、国内外の成功モデルからベストプラクティスを採用するよう呼びかけと共に、終了しました。そして、国際的なモデルに焦点を当てた2日目のディスカッションに、議論は続いていくこととなりました。