ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過し、ウクライナの人々にとって、改めて祖国と将来について考える時期になりました。そして、日本そして世界の各地で様々な催しが行われ、2月19日には日本政府主導のウクライナ経済復興支援会議が開催されるなど、新たな動きも出てきています。パスウェイズ・ジャパンでは、2022年3月以降、パートナーの日本語学校・大学と連携し、ウクライナから108名の若者を受け入れ、日本語教育・高等教育の機会と就労・自立に向けた支援を提供してきました。現在まで若者達の一人ひとりに寄り添い、この日本で望むキャリアを見つけ、実現できるよう、様々な機会を提供し続けています。
来日から約1年半が経ち、すでに大学・大学院進学や就職を果たした学生もいれば、引き続き日本語力向上と進学・就活に向けて、日々努力を続けている学生達もいます。
現在までの学生達の日本語習得状況、進路の概況は以下の通りです(2月19日現在。大学受験・就職活動中の人を含むため概数)。
日本語レベル
- 1年-1年半の日本語学校・大学での学習を経て、多くが日本語能力検定試験N3レベル(600時間相当)に到達
- 一定数はN2, N1試験に合格(800-1200時間相当)
- 来日時に学習経験がなかった学生も、N4レベル(400時間)に到達し、日常会話は十分可能。
進学
- 高卒や大学学部在学中に来日した学生の内、約40名が大学学部・専門学校への進学を実現。また10名程度が大学院進学。
就職
- 大卒で来日の学生で就職を希望した学生の内、約10名が就職(IT系企業、広告代理店、メディア、メーカー、教育機関等)
108人の内、健康や個人のキャリア形成、家族の状況等を理由にウクライナに帰国した学生は、現在まで5名に留まっており、その他の学生は先行きが見えない祖国の状況から、多くが日本での就職とキャリア形成を望んでいます。
今後も、機会や情報が不足し人生の選択肢を狭めることがないよう、パートナーの教育機関と連携して、一人一人に寄り添って、最善の道を見つけられるようサポートしていきます。
また、未だウクライナでの紛争解決の道筋が見えない中、今なおウクライナや一時避難先から、日本への避難を希望する相談は毎月寄せられており、2024年度の日本語学校パスウェイズ、大学パスウェイズの学生採用を通じて、今年3月には国外から新たに10人の若者を日本に受け入れます。
このように様々な経験を持った難民・避難民の方が社会の一員となることは、日本社会にも新しい可能性を拓き、母国への帰還を選択した場合も、日本とウクライナの架け橋となってくれることが期待されます。パスウェイズ・ジャパンでは、難民・避難民の就職支援の一環として、難民・避難民の採用に関心を持つ企業の交流会や直接学生と面会する「就活フェア」なども実施しました。参加企業の中でインターンとしての採用や就職説明会開催など、就労に向けた動きが広がっています。これら企業からは、彼ら学生が多様な経験やスキルを有する「人財」であり、多様性の向上によるイノベーションや国際的なビジネス展開の加速を期待する声も寄せられています。今後も、「人財」としてのポテンシャルを持つ難民・避難民の学生がその能力を発揮できるよう、基盤となる日本語教育を提供すると共に、スキルや学位、就労経験など「人財」としてのポテンシャルを広げ、企業での受け入れの土壌を醸成していきます。
一方で、日本に在住する約2,000人のウクライナ避難民全般を見渡すと、年齢や社会的背景、メンタルヘルスの課題等から、日本語習得やフルタイムの就労に至るまでに、様々な課題に直面している方々が多くいることも確かです。避難民に関わる政府、自治体、企業、市民社会が今後さらにどのように連携して、人生の様々なステップにあるこれらの方々の日本社会での滞在と自立を支援していけるのか、これからが正念場であるともいえます。
パスウェイズ・ジャパンは、ウクライナ避難民の受け入れにより、日本国内で広がった難民・避難民に関わる様々な関係者と、今後さらに連携を強めて、社会全体でこれらの人々を受け入れ、自立を促す政策の実現や制度の改善に、取り組んでいきます。そして、ウクライナ避難民の受け入れで形作られた様々な制度やパートナーシップは、今後の日本社会における各国からの難民・避難民のよりよい受け入れの形に、繋がっていくものと考えています。
パスウェイズ・ジャパンは、ロシアのウクライナ侵攻から2年を迎えるこの機会に、思い描いていた人生が突然変わることを余儀なくされたウクライナの人々に思いを寄せ、日本に逃れた彼らが新たな未来を切り拓くことができるよう、パートナーの教育機関や企業・団体、支援者の皆様、そして社会各層の様々な組織と協力して、今後も尽力していきます。
ウクライナ学生・ヤナさんのメッセージ:
「日本での生活はもうすぐ2年を迎えます。卒業後の進路を考えていますが、現在の戦争の状況を考えると、とても不安が強いです。ウクライナに戻りたい気持ちもありますが、正直難しいのではないかと考えています。しかし、日本での就職にも不安や難しさを感じており、毎日未来への不安が絶えません。戦争によって、家族や友人の夢や人生が大きく変わってしまいました。2年という長い時間によって、不安な気持ちが増し、将来に対する想いが脆くなっている人も多いと感じていて、心配しています。
まずは、自分自身が日本で積極的に学びを深めて、この経験を未来に役立てるようにしたいと思っています」
*2022年9月に来日。現在、大学院1年目。日本での就職を視野にパーソルクロステクノロジー株式会社でインターンシップを行なっている。
報道関係者の皆様
ウクライナ避難民の受け入れに関して、当団体や支援する学生への取材をご希望の場合は、下記までご連絡ください。
⼀般社団法⼈ パスウェイズ・ジャパン 広報担当 ⽯井
Email: office@pathways-j.org