パスウェイズ・ジャパン(PJ)では、3月中旬ごろから、大学や日本語学校、在日ウクライナコミュニティと連携し、ウクライナ国内や周辺国にいる来日希望者への呼びかけを行ってきました。4月10日時点で、連携団体(大学、日本語学校)経由での問い合わせを含め397人の方から応募をいただいています。当初の想定以上の希望者数に、驚くと同時に、教育の道を提供するPJのプログラムが必要とされていることを実感しています。
来日希望者の大半は20代の女性たちです。
たとえば、
― 戦禍を逃れて、とりあえずウクライナ国内の安全な場所に避難し、その先のより安全で安心できる避難先を探している方。
― ロシア軍の侵攻の直前に両親が欧州の親族宅に逃してくれたものの、学んでいた日本語を活かして日本への留学を希望する方。
― 避難の途中で両親と離れ離れになり、今も音信不通で、安否もわからない状況の方。
一人一人の背景はさまざまですが、多くの応募者が、これまでに日本語を学んだ経験を持っています。そして、安全を求めて退避するのであれば、学んでいた日本語を活かしたいと、来日を希望し、応募しています。親たちは、子どもだけでも安全な場所に送り出したいと、長い離別になることを承知で、このプログラムへの応募を後押ししてくれています。
選考面接は、PJスタッフと外部の専門家で構成する選考委員会が、オンラインで行っています。面接は、時差を考慮して日本時間の午後3時から10時の間に、一人当たり30分から45分ほど実施しています
選考では、志望動機に加え、日本語力や学力、日本社会への適応力、戦火の影響などを確認し、総合的に判断しています。
日本語を学び、将来どんな道を切り拓いていきたいのか、それを実現するために必要な日本語力を習得できる土台が、客観的にみて十分か。不安定な状況にいる家族と離れ、ウクライナとは違いの多い日本社会に馴染むことができるか。脆弱性が高く、このような条件で来日し、自立していくことが困難にはならないか。PJのプログラムに参加する以外に教育を受ける機会はないのか。多数の応募が寄せられ、どの人も避難先を必要としている状況ですが、PJでは、「教育を通じた難民の受け入れ」という手段で、一人でも多くの人に避難の道を提供すべく、取り組んでいます。
PJの事業は、民間主導による難民受け入れにいち早く取り組んできたカナダの実践を参考に、実施しています。代表の折居は、カナダでのその取り組みに関する研修も受け、学んできました。
カナダでは、長年にわたる民間での難民受け入れ経験から、選考の段階で、候補者の「期待値を調整する」ことが非常に重要だとされています。逃れた先の国で新たに生活を立ち上げ、自立していくことも決して、簡単ではないことや、期待するようには必ずしもいかないことなど、現実の厳しさなども、候補者に事前に伝えることを重視しています。命からがら逃れてくる人に対して、それらを伝えることは、選考する側としては容易ではありません。しかし、来てしまってから、社会に馴染めず、「こんなはずではなかった」となることは、当事者にとっても、受け入れ社会にとっても、できれば避けたい事態です。
第一陣については、今週中に面接を終え、週末には候補者を確定させる予定です。その後、急ぎビザを申請し、飛行機チケットを手配します。早ければ、4月半ばに来日が実現します。
日本政府の迅速な動きに加え、企業や自治体からもさまざまな受け入れ支援の表明が続いています。日本社会のリソースともうまく連携をしながら、一人でも多くのウクライナ避難民の受け入れを目指していきます。