日本企業で活躍するウクライナ出身の若者の話〜活動説明会レポート

世界で増え続ける難民・避難民。一方、最近日本でも外国人の方を差別・排除しようとする動きも見られるようになりました。

パスウェイズ・ジャパンでは、教育を通じて難民・避難民の若者に新しい道筋を日本でつくる取り組みを行なっています。新しい難民・避難民の受け入れの取り組みと、日本で活躍する難民・避難民の若者をより多くの方に知っていただけるよう、活動説明会を開催しています。

当日は、まず、代表理事の折居から、教育を通じた受け入れとパスウェイズ・ジャパンの教育を通じた受け入れのモデルと活動について紹介しました。

その後、ウクライナ出身のビクトリアさんが登壇しました。ビクトリアさんは、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年5月に来日し、大学の非正規課程で1年間日本語を学んだ後、2023年に大学院に進学、2025年に卒業し、日本の企業に就職しました。

ビクトリアさんの話

Q 戦争が始まった際、パスウェイズのプログラムに応募した理由を教えてください。
戦争が始まったとき、私は大学の最終学年でした。ちょうどコロナの制限が終わり 少しずつ普通の生活に戻り始めた直後に戦争が始まり、普通の生活はもう一度止まりました。その時、1~2か月ほど大学の授業もなく、その後、授業がオンラインで再開されました。その時に、日本語の先生から、パスウェイズ・ジャパンとウクライナの学生向けの奨学金を教えてもらいました。

最初はすぐに応募しようとは思いませんでした。最終学年だったため、卒業できるかを一番心配しました。そして、戦争中、家族を残して日本に行くことにも不安がありました。 長い間迷い続け、実際に応募したのは、締め切りの最後の日でした。

応募を決めた理由は、日本への強い興味がありました。大学で日本語を学び、日本文化にも興味があり、将来は日本の大学院に進学したいと考えていました。そこで後悔しないために一度挑戦してみようと思い、応募を決めました。結果として、パスウェイズ・ジャパンと大学が大きなチャンスを私に与えてくれました。心より感謝しています。

Q  来日した直後、特に大変だったこと、思い出に残っていることは何ですか。
日本に来たばかりのころ、私は多くのことに感動しました。その前に、映画やドラマでしか見たことなかった景色を実際に見ることができ、町の雰囲気や食べ物や文化、日本人のやさしさが強く印象に残っています。特に印象的だったのが、日本人がとても自然を大切にしていることです。平日は忙しく働いても、休日は、山や海、公園などに行ってリフレッシュしながら、自然を楽しんでいると感じました。私も日本で生活するようになって、ハイキングを始めるようになりました。日本は山が多く、自然を感じられる環境があり、忙しい中でも自分の時間を大切にする日本の生活スタイルに、とても魅力を感じました。

一方で、大変だったこともありました。 一番大きかったのは、やはり言葉です。日常生活の中でわからないことが多く、苦労することも多かったです。それでも、日本語が上手ではない私の話を最後まで聞き、一生懸命理解しようとしてくれた方々には本当に感謝しています。また市役所などの手続きも大変でした。今でも少し難しいと感じることがありますが、これは外国人だけでなく、日本の人にとっても大変なことだと思います。

Q  日本の大学生活はどうでしたか。
日本での大学生活はとても楽しかったと思います。ウクライナでは、コロナの影響で、オンライン授業が続き、ほとんど家にいる生活だったため、日本での大学生活はとても新鮮に感じました。日本に来て入った大学では、様々な国籍や背景を持った学生と出会い、授業中でも外でも、会話をすることができました。私は2つのサークルに参加しました。1つはテニスサークル、もう1つは留学生向けの文化交流するサークルです。大学院生がサークルに参加することは、あまり一般的ではありませんが、 私は学生生活を思いっきり楽しみたいと思い、挑戦しました。ウクライナではコロナと戦争の影響で、このような経験ができなかったため、日本での大学生活は、私にとってとても大切な時間となりました。

また大学時代には、日本全国を旅行する機会がありました。旅行を通して日本の文化や地域について見て、より深く知ることができました。私にとってよい経験となりました。 

Q  就活はどのように進めましたか。
日本の就活は、ウクライナとは結構異なります。ウクライナでは、多くの人が卒業後に仕事を探し、一般的には面接は1回だけあります。日本と比べて短期間で決まります。ウクライナでは、卒業してすぐに仕事を見つけるのは少し難しいと思います。企業は経験を重視する傾向があります。日本では、新卒を積極的に採用する企業が多いのはいいと思います。ただし、日本では、期間も長く、面接や試験の数も多いため、時間と体力が必要です。多くの日本の学生は早い時期から就職活動を始めますが、私は卒業の約7か月前から本格的に始めました。日本では少し遅いスタートだと思います。私はマーケティングの仕事を希望していました。学生時代からマーケティングに興味があり、修士論文もマーケティングをテーマにしていました。でも、新卒向けのマーケティングの仕事は多くないと思います。しかし、私は、ラッキーなことにいくつかの機会を見つけることができました。現在の会社は、2回目の面接で自分にぴったりの場所だと感じました。インタビューで出会った方や職務内容に興味を持ち、いいマッチングだと確信しました。

Q 日本の企業で働いての感想を教えてください。
私は去年の4月から現在の会社で働いています。私にとって、初めての仕事のため、他の会社と比べることはできませんが、自分の経験としてお話しします。私の経験として、最初の3か月は難しかったと思います。私は社会人としての経験がなく、毎日多くの新しいことを覚える必要があり、仕事のスピードについていくのに精いっぱいでした。私は、完璧を求める性格なので、ミスをすると落ち込むこともありました。しかし私の同僚の皆様が丁寧に教えて支えてくださったおかげで、少しずつ自信を持ち、自分の仕事にも慣れていきました。今でも学ぶことがたくさんありますし、特に敬語は大変難しいと感じています。それでも、暖かく協力的な職場環境なので、安心して成長できていると感じています。

Q 今後の目標を教えてください。
これからはもちろん仕事を通して成長し、より責任のある仕事やこれまでより難しい課題に積極的に挑戦していきたいと考えています。また、日本語についても足りないと感じているので、もっと上達させて、仕事でも日常生活でも、不安なくコミュニケーションをとれるようになることを目標にしています。

また、個人的な目標としては、日本国内だけでなく、外国にももっと旅行したいと思います。特に日本に近いアジアの国に興味があります。また、もう1つの目標として、テニスをもう一度始めたいと考えています。私は、学生時代はテニスがあまり上手ではなかったのですが、それでもとても楽しく、改めて挑戦したいと思います。

【質疑応答】
ウクライナ侵攻により急に日本に来ることになりながら、様々な挑戦をし自分のキャリアを日本で切り拓いていった経験を日本語で話してくれたヴィクトリアさん。参加者からも様々な質問が寄せられました。

Q 難民・避難民の学生は、日本の就活に悩むことも多いですが、周りに相談できる方がいましたか。モチベーションはどうやって保ちましたか。
就活前にパスウェイズ・ジャパンで行われたセミナーのおかげで準備しました。その後に、WELgeeにもたくさん支えてもらいました。私にはメンターがついて、何か難しく悩んだことがあるときはメッセージを送り、いい言葉を受け取りました。

日本に住んでいる外国人の方は少し寂しい気持ちになることがよくあると思います。そのような時は、他のウクライナ人の友達がいいと思います。同じような悩みがあり、話すとよい気持ちになります。このようなサポートが必要だと思います。

Q 日本の習慣などで困っていることはありますか。
会社の制度でよく分からないことがあります。また、会社ではよく敬語を使いますが、私は敬語が下手です。

私は、海外事業部で働いていて、同僚の半分は外国人で、よく英語を使います。私はもう10か月働いて、色々な人と友達になりました。何か問題があれば、その人に聞いて、色々なサポートを受けます。

Q 今後日本でやってみたいことはありますか。
ハイキングが好きで、富士山に行ってみたいです。まだそのレベルではないので、再来年くらいを目指します。旅行が好きで、北海道、沖縄に行き、今は関西に住んでいるので、他の場所にも行ってみたいです。おすすめの旅行場所があれば教えてほしいです。

Q ウクライナの方は先が見えない中で将来を決めなくてはなりません。日本にいる避難民の方へのメッセージ、経験から伝えられることはありますか。
今日は、新しい経験をすることで、私の人生がどのように変わったかをお話ししました。ウクライナの方やシリアの方、色々なアフリカの方など日本に住んでいる方にメッセージがあります。新しいことに挑戦することには意味があり、人生をより豊かにしてくれると思います。ぜひ恐れずに、一歩、踏み出してみてください、というメッセージです。

Q 学生時代にアルバイトはしましたか。
カフェで1年以上働いていました。いろいろなお客様とよく話しました。外国人なのでよく質問が出て、ウクライナのことをよく話しました。この経験には感謝したいと思います。

Q パスウェイズ・ジャパンはどんな存在ですか。
家族のような存在です。パスウェイズ・ジャパンの折居さん、スタッフ、学生は日本の家族になりました。この経験のおかげで感謝しています。

Q 最後に、メッセージはありますか。
いま、いろいろ悩んでいることがあると思いますが、問題があるのは皆さん同じだと思います。だから寂しいと感じるのではなく、他の避難民とも共有したほうがいいと思います。現在は素晴らしいチャンスがあります。日本に住んで様々な機会があるので、一生懸命頑張りましょう。

今回も、学生、企業の方、大学の方など、様々な方に参加いただきました。パスウェイズ・ジャパンの活動紹介とビクトリアさんのお話しをうけ、下記のような感想が寄せられました。

  • 留学生の存在が、庇護すべきものから日本社会にとっても大切な人財となる、ウィンウィンの関係を築いていくという点にとても共感しました。
  • 卒業生の皆さまのお話から、実際の経験に基づいたリアルな声を聞くことができ、大変参考になりました。特に、日本での学習や生活の中で直面した課題や、それをどのように乗り越えたのかについて、今後さらに詳しくお聞きできれば嬉しいです。
  • パスウェイズ・ジャパンは私にとって日本の家族のようだ、とおっしゃったこと。選考から来日、就学、就職まで、まさに人生に伴走されているのだなと伝わりました。
  • 堅実に、且つ楽しみながら日本での生活を送っていることが良く分かりました。前向きに踏み出すことが重要との後輩への言葉が大変印象的でした。これからも素敵な人生を紡いでいかれることをお祈りします。

パスウェイズ・ジャパンでは、今後も、イベント等の開催を通じて、難民・避難民の若者の姿や教育を通じた受け入れの取り組みについて紹介していきます。ぜひお気軽にご参加ください。

次回は、6月ごろ開催予定です。開催が決まった際は、メールマガジンでお知らせします。
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