ウクライナの人道危機と日本への退避者や難民受け入れに関するコメント

2022年3月3日

一般財団法人 パスウェイズ・ジャパン

 今年2月以降、東部2州を巡り軍事的緊張が高まっていたウクライナで、24日に開始されたロシアの軍事的侵攻により、人道危機が日々拡大しています。国連人道問題調整事務所(OCHA)の3月2日時点の状況報告によると87万人の人々が難民となって周辺国に逃れ、国内でも50万人が避難しているとみなされています。今後も事態の拡大と長期化は避けられず、さらに多くの人々が難民、避難民となることが見込まれる中、パスウェイズ・ジャパンは国際社会が連携して、難民と避難民の保護と支援に取り組むべきと考えます。

 このような中、政党や議員、NGO等市民社会から、日本でもウクライナの退避者や難民を受け入れるべきとの声がいち早く出され、政府が3月2日の首相談話によって受け入れの方針を迅速に発表したことは、日本社会への難民受け入れの拡大に取り組むパスウェイズ・ジャパンとしても、歓迎すべきことと評価しています。

 日本社会では、古くは1980年代のインドシナ難民の受け入れに始り、2016年からはシリア難民の留学生としての受け入れ、また2021年5月にはミャンマーの人道危機に伴う在日ミャンマー人への在留資格付与方針、さらに8月にはアフガニスタンの退避者の政府及び民間による受け入れ開始と、ここ数年間に起きた大きな人道危機において、政府、民間の様々な組織が、難民や退避者の受入れに尽力し、経験と教訓を積み重ねてきた実績があります。

 退避者や難民の受け入れでは、すぐに祖国に帰還することは困難であることを前提に、政府による査証や在留資格の発行に加えて、来日した後に安定した、尊厳のある生活に至るよう、来日時のオリエンテーション、日本語教育、就労支援、家族の生活や教育支援、地域社会への受け入れ支援等が必要となります。これらサポートの準備と提供には、政府、自治体、企業、大学・教育機関、市民社会組織、宗教組織そして地域の様々な個人等が調整、連携して取り組んでいくことが求められてきます。

 また私たちは、過去の難民受け入れの経験から、退避者や難民を単に支援対象、社会的な「負担」と捉えるのではなく、社会の一員、そして「人財」と捉え、社会的自立に至るための能力向上と機会を提供する視点が重要であることを学んでいます。彼らは祖国に平和が訪れれば、日本で培った経験と能力を生かして、両国を繋ぐ国際人財となっていく可能性を秘めています。

 パスウェイズ・ジャパンは、今回のウクライナの退避者と難民の受け入れが、日本社会への難民受入れの新たな1ページを開くものとなり、戦火を逃れた人々をこの平和な国に一員として迎えることができるよう、持てる経験や知見を可能な限り提供していきます。今後の具体的な活動については、ウェブサイト及びSNSにて適宜発信していきますので、この問題に関心を持つ皆様のご理解とご協力をお願い致します。