渡邉利三国際奨学金2024年度授与式を開催しました

難民の状況となった人々の高等教育への進学率は、全世界で6%と、一般の若者に比べて著しく低く、SDGsの枠組みの中、2030年までに15%を達成するため、各国で取り組みが進められています。「渡邉利三国際奨学金」は、難民の背景を持つ若者達が、高等教育を受ける機会を得ることで日本社会で活躍し、引いては 日本社会を多様な人財が活躍できる国に変える原動力となることを願う、寄付者の渡邉利三氏の強い意志に基づいて、設立されました。この度、2024年度の奨学金の授賞式を4月21日に都内で開催しました。遠方からオンラインで参加した方も含め、奨学生、支援団体や支援者の方々、合わせて約30名が集い、奨学生がそれぞれの目標に向かって進んでいくことを祝しました。

本奨学金は、難民となる困難な経験を経ても学びを続け、将来社会に貢献しようと努力する若者達が大学(短大、大学学部、大学院)進学するための奨学金(学費等と生活費補助)を提供することで、卒業後に就職・自立し、彼らの夢の実現に寄与することを目指します。

留学や特定活動等、未だ安定した在留資格を得ていない難民の方を対象とする日本では数少ないプログラムの一つとなっています。

本年度は46名の応募者があり、学識経験者等で構成された選考委員会による審査を経て、シリア、アフガニスタン、ミャンマー、トルコ出身の合計12名が奨学生に選ばれました。奨学生達は2024年4月に大学学部に入学した学生から、博士課程在籍中の大学院生まで多様な学びの過程にあります。また、今年は、トルコ出身のクルドの背景を持つ方が採用され、学生たちの背景はさらに多様になりました。

*渡邉利三国際奨学金の概要はこちらをご覧ください。

*募集結果と報告についてはこちらをご覧ください。

当日は、各奨学生がこれまでの経験と今後の抱負についてスピーチを行いました。ミャンマーとアフガニスタンの学生は、母国で政治的な混乱や抑圧などで将来の道が描けない困難な状況について語ってくれ、母国に帰ることが難しい中、奨学金を得ることで日本で将来への道をつなげることができたと、感謝の思いを表してくれました。そして、現在学んでいることを活かし、今後、日本社会や母国にどのように貢献したいかを力強く語ってくれました。また、トルコ出身の学生は、日本で在留資格が不安定な状況で暮らした自身の経験を振り返りながら、今後自身と同じように幼少期に来日したり、日本で生まれた人々の研究を進めて行くことを話しました。

また、前年度から継続して採用となった奨学生からは、この1年での成果と今後の目標が話されました。就活を成功させて見事第一志望の企業からの内定を得た学生もいれば、専攻に関連した企業でインターンシップを開始し学生もおり、今後のキャリアに向けてステップアップしている状況が共有されました。また、日本語能力検定試験の受験やカウンセラーの資格取得、インターンシップなど、今後の目標も具体的に発表してくれました。大学院生からは、海外の学会で発表した経験などが話され、研究が着実に進んでいることが伺えました。母国で研究成果を活かし貢献したいという思いを強く持ちながら、母国に戻るのが難しい状況が続く中、日本社会に貢献したいという意欲も語られました。

*学生のスピーチはこちらをご覧ください。

懇親会の時間では、初めて会う同じ出身国の学生同士で交流を深めたり、専門分野が似ている学部生・大学院生で情報交換をするなど、奨学生の中でのネットワーク構築も行われました。いずれの学生も、母国の状況を危惧しながら、日本で教育を通じて自身の力を伸ばし、それぞれの分野で日本社会に、そして祖国と国際社会に貢献しようとの強い意志と高い目標をもっています。このような奨学生同士のネットワークも、今後目標に向かって歩む上で大きな支えとなります。

パスウェイズ・ジャパンでは、今後、定期的な面談も持ちながら、奨学生がそれぞれの学びを深め、自分の目標に向かって進み、将来日本社会で活躍できるようサポートしていきます。